子供の頃の、今思うとちょっと怖い話

子供の頃はよく分からなくても、大人になってから思い出すと、ちょっと怖い話ってありますよね。

 

そんなお話です。

 

 

あれは小学校低学年くらいの時です。

学校のお昼休みに、友達の山岡君が話しかけてきました。

 

「なあ、ちょっと面白いもん持ってんだけど、見たい?」

 

「えっ?な、なに?見たい、見せて!」

 

そう言って、山岡君はポケットからガサゴソと何かを取り出しました。

取り出した物をよくみていると、なんとそれは

 

注射器でした。

 

「えっ??そ、それ本物?どうしたのそれ?」

 

山岡君は自慢げに言いました。

 

「本物だよ、ちょっと秘密の隠れ家で見つけたんだ」

 

「ひ、秘密の隠れ家?どこにあるの??」

 

「行きたい?いいよ、今日の放課後一緒に行こう」

 

こうして、山岡君と放課後、その「秘密の隠れ家」へ行くことになりました。

 

 

秘密の隠れ家は、いつもよく通る道の細い路地を進んだ先にありました。

 

「ここはよく通るけど、こんな道入ったことなかったな・・・」

 

「ここだよ」

 

山岡君に紹介されたのは、ボロボロに朽ち果てた二階建ての一軒家でした。

 

「え?ここ?誰も住んでないの?」

 

「さあね、多分住んでないと思うよ」

 

そうそっけなく言うと、山岡君はドアを開け、中に入っていきました。

 

「鍵開いてるんだ・・・」

 

僕もおそるおそる山岡君についていきました。

 

正直、子供の頃の話なので、1階の様子はあまり記憶が鮮明ではありません。

たしか、物がやたらと多く、足の踏み場がなかったのはなんとなく覚えています。

 

山岡君は1階はあまり見ず、すぐに2階へ上がっていきました。

2階へ上がると、部屋中の床に足の踏み場がないほどの、大量のエロ本が散乱していました。

その量がものすごく、子供の膝くらいの高さまで乱雑に積み上げられていました。

 

僕は、部屋の隅にある机に目が止まりました。

机の上をよく見ると、なんと机の上には

 

何十本もの大量の注射器が乱雑に散らばっていました。

 

僕がそれを見ていると、

 

「そこから持ち出したんだ、好きなだけ持っていくといいよ」

 

山岡君がそう言いました。

 

僕は注射器にあまり興味がなかったのと、なんとなくそこに長くいたくなかったので、

 

「そ、そろそろ行こうか」

 

そう伝え、注射器は持っていかず、下に降りることになりました。

 

 

「おい」

 

急に山岡君に呼び止められ、後ろを振り向くと

山岡君は注射器を手に持ちながら、

 

「この隠れ家の事は誰にも言うなよ、もし誰かに言ったら、この注射器でブッ刺すからな」

 

冗談かと思い、山岡君の顔を見ると、目がまったく笑っていない無表情のままでした。

 

「う、うん、わかった・・・」

 

そう言うと、二人はそれぞれ家に帰っていきました。

 

 

その後、山岡君は注射器を親に見つかり、親が不審に思い警察に通報したそうです。

山岡君は、もともとキレると何をするかわからない子であったため、僕はその後、山岡君とはあまり遊ばなくなり、親の都合でその地域から転校しました。

 

今思うと、僕達があの隠れ家にいる時に、薬物中毒者の住人が帰ってきていたらと思うと、ちょっとゾッとします。

あと、山岡君があんなに注射器に執着していたのも、ちょっと怖かったです。

 

そんな昔話でした。