オーストラリアで出会ったイカれた天使 その1

 

初めまして、ピッコロ三世と申します。

初投稿で不慣れではありますが、読んでいただけたら幸いです。

長い話なので何パートかに分けて書きたいと思います。

 

僕は過去にバックパッカーをしていた事があります。

バックパッカーとはバックパックを背負い、国内や世界中を旅する人の事です。

かなり昔の話ですが、その旅の中で、オーストラリアの先住民アボリジニの民族楽器「ディジュリドゥ」という楽器に出会いました。

僕は、そのディジュリドゥという楽器の音色に一瞬で取り憑かれ、必死に練習をしてプロを目指すようになりました。

そして、ディジュリドゥを始めて1年位が経った頃だったと思います。

本場のオーストラリアに行って修行をしたいと思うようになり、バックパックディジュリドゥを背負って日本を飛び出しました。

 

オーストラリアでは路上でディジュリドゥを演奏をして、投げ銭を貰うという生活をしていました。

日本ではあまり馴染みがないですが、オーストラリアでは路上パフォーマンスをBusking(バスキング)と言い、割と普通に職業にしている人も多く、もちろん腕にもよりますが、結構稼げたりもします。

これは僕がオーストラリアでバスキングをしながら旅をしていた頃の話です。

 

 

あれはたしか、サーファーズパラダイスと言う町に立ち寄った時の話です。

当時本当にお金がなく、宿に泊まるお金も惜しいくらい貧乏でした。

なので、宿代をケチって野宿をしながらバスキング生活をしていました。

ある日、いつも通りバスキングをしていると、目の前にスキンヘッドのイカつい白人のおじさんが立ち止まり、僕の演奏を見ながら何枚か写真を撮り始めました。

「あぁ観光客かな」と思い、カメラにピースをしました。

すると、おじさんが近づいてきたので、握手をしようとした瞬間、いきなり楽器を奪われ、「演奏をやめろ!」と怒鳴られました。

何が起きたのか理解できずにいると、英語で「さっさと機材を片付けてついてこい!」と言われました。

そそくさと楽器とアンプをしまい、おじさんについて行きました。

着いた先は交番で、そのおじさんは自らをcity councilだと言いました。

city councilとは市議会の事で、本来バスキングをするには、各町によってライセンスを取得する必要があり、当時僕は、他の街のライセンスは持っていましたが、サーファーズパラダイスのライセンスは持っていませんでした。

しかし当時の僕は、どうせ怒られて終わりでしょ?とかなり舐めていました。

その後、宿泊先などを詳しく聞かれ(野宿なので宿泊先はない)日本の実家の番号も聞かれました。

そして長い質問攻めが終わり、やっと帰れると思った時おじさんが言いました。

 

「この楽器と機材は没収する、一週間以内に罰金700ドル払え」 

 

僕「え??」

 

「払えない場合はオークションに出品する」

 

僕「えぇぇぇぇ!?」

 

「嘘でしょ!?俺はただ路上で音楽をやっていただけだよ!勘弁してください!悪魔かよ!!」

 

「帰れ!」

 

僕の遠吠えは虚しく、交番を追い出されました。

自慢じゃないですが、その時の所持金はマジで5ドル位だったと思います。

ちなみに当時のオーストラリアドルのレートは、日本円と大して変わらない位だったので、罰金は7万位だったと思います。

僕の唯一の稼ぐ手段だったバスキングができなくなり、近くのビーチで泣き叫びました。

「本当にこれからどうすればいいんだろう・・・」

 

つづく

 

 

 

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精神疾患とポスティング

こんにちは、ピッコロ三世と申します。

僕は15年位前から、鬱病社会不安障害という精神疾患を患っています。

鬱病は有名ですが、社会不安障害とは、特定のシチュエーションに異常なほどの不安や緊張を感じてしまい、社会生活に支障をきたすという病気です。

僕の場合、人と会ったり話したりする事に異常に不安を感じてしまい、どうしても人を避けてしまいます。

病気を発症する前は、全然問題なく友達とも遊んでいたのですが、社会不安障害になってからは友達とも会わなくなりました。

初めは無理してでも人と会っていましたが、最近はあまり無理をしなくなり、必要最低限ほどしか人と会わなくなりました。

 

そんな中、ずっと続けられているバイトがあります。

それはポスティングです。

ポスティングと精神疾患の相性が良く、こんな僕でも続けられています。

 

相性が良い理由①

人間関係がほぼない

一人で行う仕事のため、人間関係はありません。

会社の人との連絡は、メールや電話のみなので余計なストレスがないです。

一つあるとすれば、チラシを投函する時に、住人の方から嫌な顔をされたり怒られたりする事があるという事ですかね。

 

相性が良い理由②

時間に縛られない

鬱病になると、朝起き上がる事ができず動けない事がよくあります。

なので、なかなか毎日決まった時間に動くという事が困難です。

ポスティングは好きな時間に配布すればよいので、この辺は気が楽です。

好きに休んでもいいので、調子が良い日にだけやってみようという事でもOKです。

 

相性が良い理由③

適度な運動になる

精神疾患になると、どうしても家に引きこもりがちになってしまいます。

ポスティングは良い運動にもなりますし、日光にも当たるので自律神経にも良いと思います。

朝起きて、鬱で頭が悶々とする時に、ポスティングへ出かけ体を動かしていたら、血行がよくなり頭がスッキリしてきた事も少なくありません。

 

あまり良くない点は、給料が普通の仕事に比べて安いのと、夏の猛暑日や真冬の寒さがきつい事ですかね。

しかし、ポスティングをやる理由はお金以外にあると思うので(そもそも稼ぎたい人はポスティングなんてやらない)個人的には給料が安いのはあまり気にならないです。

暑さ寒さ対策は必須ですね。

 

そんな感じで、思いつきにまかせて書いてみました。

なかなか楽な仕事なので、精神疾患から復帰を目指す方なんかに良いのではないでしょうか。

読んでいただきありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供の頃の、今思うとちょっと怖い話

子供の頃はよく分からなくても、大人になってから思い出すと、ちょっと怖い話ってありますよね。

 

そんなお話です。

 

 

あれは小学校低学年くらいの時です。

学校のお昼休みに、友達の山岡君が話しかけてきました。

 

「なあ、ちょっと面白いもん持ってんだけど、見たい?」

 

「えっ?な、なに?見たい、見せて!」

 

そう言って、山岡君はポケットからガサゴソと何かを取り出しました。

取り出した物をよくみていると、なんとそれは

 

注射器でした。

 

「えっ??そ、それ本物?どうしたのそれ?」

 

山岡君は自慢げに言いました。

 

「本物だよ、ちょっと秘密の隠れ家で見つけたんだ」

 

「ひ、秘密の隠れ家?どこにあるの??」

 

「行きたい?いいよ、今日の放課後一緒に行こう」

 

こうして、山岡君と放課後、その「秘密の隠れ家」へ行くことになりました。

 

 

秘密の隠れ家は、いつもよく通る道の細い路地を進んだ先にありました。

 

「ここはよく通るけど、こんな道入ったことなかったな・・・」

 

「ここだよ」

 

山岡君に紹介されたのは、ボロボロに朽ち果てた二階建ての一軒家でした。

 

「え?ここ?誰も住んでないの?」

 

「さあね、多分住んでないと思うよ」

 

そうそっけなく言うと、山岡君はドアを開け、中に入っていきました。

 

「鍵開いてるんだ・・・」

 

僕もおそるおそる山岡君についていきました。

 

正直、子供の頃の話なので、1階の様子はあまり記憶が鮮明ではありません。

たしか、物がやたらと多く、足の踏み場がなかったのはなんとなく覚えています。

 

山岡君は1階はあまり見ず、すぐに2階へ上がっていきました。

2階へ上がると、部屋中の床に足の踏み場がないほどの、大量のエロ本が散乱していました。

その量がものすごく、子供の膝くらいの高さまで乱雑に積み上げられていました。

 

僕は、部屋の隅にある机に目が止まりました。

机の上をよく見ると、なんと机の上には

 

何十本もの大量の注射器が乱雑に散らばっていました。

 

僕がそれを見ていると、

 

「そこから持ち出したんだ、好きなだけ持っていくといいよ」

 

山岡君がそう言いました。

 

僕は注射器にあまり興味がなかったのと、なんとなくそこに長くいたくなかったので、

 

「そ、そろそろ行こうか」

 

そう伝え、注射器は持っていかず、下に降りることになりました。

 

 

「おい」

 

急に山岡君に呼び止められ、後ろを振り向くと

山岡君は注射器を手に持ちながら、

 

「この隠れ家の事は誰にも言うなよ、もし誰かに言ったら、この注射器でブッ刺すからな」

 

冗談かと思い、山岡君の顔を見ると、目がまったく笑っていない無表情のままでした。

 

「う、うん、わかった・・・」

 

そう言うと、二人はそれぞれ家に帰っていきました。

 

 

その後、山岡君は注射器を親に見つかり、親が不審に思い警察に通報したそうです。

山岡君は、もともとキレると何をするかわからない子であったため、僕はその後、山岡君とはあまり遊ばなくなり、親の都合でその地域から転校しました。

 

今思うと、僕達があの隠れ家にいる時に、薬物中毒者の住人が帰ってきていたらと思うと、ちょっとゾッとします。

あと、山岡君があんなに注射器に執着していたのも、ちょっと怖かったです。

 

そんな昔話でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供の頃のちょっと変わった友達の話

僕が幼稚園から小学校4年生までよく遊んでいた友達がいます。

彼は「あきお」といって、すごくヤンチャな奴で、みんなで遊ぶ時はいつも彼が面白い事を見つけ、先頭を切る、それにみんながついていく、そんな奴でした。

がたいもよかったため、しょっちゅう喧嘩をしては相手の子を泣かせていました。

あと、とにかく自転車で走るのが速くていつも先頭を走っていました。

僕は自転車で走るのが遅くて、いつもついていくのがやっとでした。

 

家の中で遊んでいる時、外で暴走族が走る音が聞こえてくると、一目散にベランダに出て、

目をキラキラ輝かせながら「わぁ、かっこいいなぁ」と呟いていました。

僕は子供ながらに「こいつ、大きくなったら絶対暴走族になるだろうな」と思っていました。

 

そんな「あきお」とのエピソードです。

 

僕が小学校低学年位の時、近所で「シャララさん」という変なおばさんがいました。

シャララさんは全身花柄のド派手な服を着て、見たこともないバケツみたいな大きな花柄の帽子を被っていました。

そしていつも大きな声で独り言を言いながら、ピョンピョン跳ねたり、クルクル回りながら近所を徘徊していました。

 

僕はとにかくシャララさんがものすごく怖かったんです。

 

子供達の噂話では、シャララさんはいつも包丁を持ち歩いていて、シャララさんのバックから包丁の柄の部分が出てるのを見たと言う奴がいました。

僕はいつも、学校帰りにシャララさんと遭遇したら襲われるんじゃないかとビクビクしていました。

 

ある日、あきおと一緒に遊んでいた時です。

遠くの方で、花柄の女がピョンピョン跳ねているのが見えました。

僕が恐怖に怯えながら「あっ!?シャララだ!」と言うと、

あきおが「シャララ?なにそれ?」と言いました。

あきおはシャララさんの事を知りませんでした。

僕がシャララさんの事を説明すると、

 

「なにそれ!面白そうじゃん!話しかけに行こうぜ!」

 

「え??」

 

そう言って、あきおはシャララさんの方へ走っていきました。

 

は、話しかける??なにが??

 

僕の中でシャララさんに話しかけるという発想がなかったので、思わず固まってしまいました。

そしてものすごくビビりながらあきおについていきました。

 

しかしシャララさんは、あきおが何を話しかけても

 

「俺は神だ」

 

としか言いません。

 

あきお「なにしてるの?」

 

シャララ「俺は神だ」

 

あきお「どこからきたの?」

 

シャララ「俺は神だ」

 

あきお「じゃあ神様出してよ」

 

シャララ「俺は神だ」

 

僕「!?」

 

 

結局まったく会話が通じず、あきおは飽きてしまい、僕らはシャララさんの元を離れました。

しかし、この一件で僕の中での「恐怖のシャララさん」は崩れ去り、「ただの変なおばさん」に変わりました。

それ以来、シャララさんに怯える事はなくなったんです。

 

 

あと、僕の恐怖の対象はもう一つありました。

「こたろー」という野良犬です。

雑種の中型犬くらいの大きさで、見た目が汚いので妙に迫力がありました。

今では珍しいですが、当時は町を徘徊する野良犬が結構いました。

こたろーも、しょっちゅう町を徘徊していて、僕はとにかく「こたろー」が怖く、いつ噛み付かれるのではとビクビクしていました。

 

 

またあきおと遊んでいる時です。

こたろーが近くを通りかかったので、僕がビビりながら

 

「あっ!?こたろーだ、逃げよう!」

 

と言うと、あきおが

 

「あっ!こたろー!こたろーおいで!」

 

と言って、こたろーの方へ走っていきました。

 

そして、あきおはこたろーを撫で回し、無邪気に遊んでいました。

僕には猛獣と戯れるムツゴローさんにしか見えませんでした。

 

 

こうして「猛獣こたろー」「たたの犬」に変わり、あきおはまたしても僕の固定観念をぶっ壊してくれました。

 

 

あきおはいつも、普通の子供が怖がる事に対して、まったく恐怖という感情を抱きません。

「面白そう!」が勝ってしまうんです。

だからいつも一人で突っ走り、僕らは振り回され、必死についていきました。

そして、しょっちゅう問題に巻き込まれ、先生に親を呼び出されたりして怒られました。

だけど、誰もあきおの事を嫌う人はいませんでした。

寧ろ、どこかでみんなあきおに憧れていたのだと思います。

 

僕の父は割とコワモテで、僕の友達とはあまり喋ったりしないので、友達からは結構怖がられていたのですが、あきおだけはなぜか僕の父にも普通に話しかけていました。

なので、父もあきおだけは気に入っており、「あいつは変な計算がなくていいな」と言っていました。

 

 

それから、僕は小学校4年生の頃にこの地域から引っ越しました。

あきおとはその後一度も会っていません。

親から聞いた噂では、僕の友達のK君が暴走族に入ったものの、抜けたくても抜けれなくなってしまい、その暴走族の上の立場にいた「あきお」が助けてくれたそうです。

本当の話かわかりませんが、やっぱり暴走族になってたんだね、あきお(笑)

 

 

そんな昔の友達の話でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーストラリアで出会ったイカれた天使 その3【完】

前回の続きです。

はじめての方は、こちらから読んでいただけたら嬉しいです。

 

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僕はデイブの家を出た後、日本人の友達に会っていた。

その友達にこれまでの事情を話し、とにかく700ドル稼がなくてはいけない事を伝えた。

 

「そんなの簡単じゃん!またバスキングをして稼げばいいんじゃん!」

 

「い、いやさすがにまた捕まるとどうなるかわからないし、それに楽器もないし・・・」

 

「だって他に方法もないんだし!やっちゃえよ!バレないようにやれば大丈夫だよ!」

 

「そういえば、前にお前から預かっていたディジュリドゥが車にあるよ!それ使っちゃえよ!いけるって!」

 

なんと以前、荷物がいっぱいで邪魔だからと彼に預けていたディジュリドゥがあったんです。

このタイミングで戻ってくるとは・・・。

結局その友達に後押しされ、町の中心から少し外れた所、city councilの目が届かない所でバスキングを始めることしました。

 

大きな紙に英語で「city councilに楽器と機材を没収されました!1週間以内に700ドル払わなくていけません、助けてください!」

そう書いて必死にディジュリドゥを吹きました。

通りすがりの人はその文章を見て、グッドサインをして投げ銭を投げてくれました。

もしかしたら助かるかもしれない、そう思えた瞬間でした。

 

 

バスキングの後、ブロウディと待ち合わせをしていると、なぜかブロウディは号泣しながらそこにやってきました。

異常なほどに号泣していたので、事情を聞くと、どうやら酒を飲んで酔っ払ったまま仕事に行き、オーナーに見つかって追い返されたらしい。

どう考えてもブロウディが悪いですが、あまりに異常な落ち込みようだったので、必死になぐさめました。

するとブロウディは「デイブの所に行く」

と言い出し、二人でデイブの元へ行く事になりました。

 

デイブの家に着くと、デイブは相変わらず上半身裸で待っていました。

するとブロウディがすかさずデイブに相談しはじめました。

正直、英語が速すぎて何を話しているのかよく分からなかったのですが、ただなんとなく「そりぁお前が悪い」

のような事を言われているのは理解できました。

 

20分位してデイブの家を出る事に。

ブロウディはこの世の終わりみたいな顔をしている。

僕は疲れていたせいか、かける言葉が見つからず、ボケーっとしたままエレベータへ向かいました。

そして、後ろを振り返るとブロウディがついてきていない。

少し戻ると、なんと

 

 

ブロウディがフェンスを乗り越えてマンションの9階から飛び降りようとしていた。

 

ボーっと下を見ながらフェンスに捕まり、体をフラフラと揺らしている。

 

とにかく僕はダッシュでブロウディの所まで走った。

 

「おいおいおい!!な、なにしてるんだお前!!」

 

ブロウディは何かぼそぼそと呟きはじめた。

 

「これは僕の人生だから僕自身で終わらせる」

 

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待て待て!落ち着け!!」

 

とにかく焦りすぎて、まともに英語が出てこない、それでも必死に説得を続けたがブロウディの耳には入っていない。

 

ブロウディは体をふらふらと揺らしている、そして、

 

 

ふいにフェンスから手を離した

 

 

その瞬間、僕は即座にブロウディに飛びつき、抱き抱えた。

 

 

「な、なにしてんだ馬鹿野郎!」

 

僕は脱力したブロウディをフェンスの内側へ引き戻した。

 

ブロウディは虚な目でずっと地面を見つめている。

 

僕はブロウディをなんとかエレベーターに乗せ、彼の家へ向かった。

 

 

家へ向かう途中ブロウディはすでに元気を取り戻していました。

しかし、心配だったのは恐ろしく浮き沈みが激しい事でした。

彼の家に着いた時には、すでにいつものテンションに戻っており、ノリノリで僕に英単語を教えてくれていました。

とても数十分前にマンションの9階から飛び降りようとしていた奴には見えませんでした。

 

 

その後、ブロウディと夜ご飯を食べに行く事になりました。

「おいしい日本食を教えてくれよ!」

そう言うと、ブロウディは上機嫌でリュックの中に酒を5,6本詰め込みはじめた。

エレベータの中で早速、缶をあけてグビグビ飲みはじめる。

マンションを出る時にはすでに2本目に突入していた。

ブロウディのテンションはどんどん上がっていき、通りすがる人に声をかけまくる。

ブロウディは携帯をなくしたらしく、途中ショップで携帯を購入。

そしてレストランへ向かいますが、途中、途中で人に絡むため全然先に進まない。

しまいには不良少女二人組に絡みはじめ、ベンチに座って話しだす始末。

女の子二人に挟まれて調子が良さそうなブロウディは、完全にご飯を食べに行く事を忘れている様子。

僕は面倒臭くなり、3人の会話が終わるまで町をぶらつくことにしました。

そして20分程して彼らの元へ戻ると。

ブロウディが一人でベンチに座っていました。

「やぁどこに行っていたんだい?さぁ飯を食べに行こう!」

そう言ってベンチを立った時、ブロウディの顔つきが変わった。

 

「あれ、あれ、ない、ないぞ!」

 

焦りながらズボンのポッケを探っている。

 

「おい、どうした?」

 

「ポケットにバイトの給料を入れておいたんだ!それがなくなってる」

 

「ちくしょう!さっきの女の子達だ!」

 

ブロウディは我を忘れて怒り狂い、女の子達の行った方向へ走り出した。

 

後を追いかけたが、女の子達はどこかへ行ってしまった後だった。

 

「うあぁぁぁぁ!くそくそ!僕はダメなんだ!僕は生きる価値がないんだ!!」

 

泣き叫ぶブロウディを僕はまたなぐさめながら街を歩いた。

すると前から、ブロウディと同じくらいの歳の男の子達が歩いてきた。

どうやらブロウディの友達らしく、ブロウディは彼らに今あった事を話しはじめた。

しかしほとんど相手にはされず、明らかに馬鹿にされている様子でした。

僕が黙ってそれを見ていると、その中の一人が話しかけてきました。

 

「おい、お前こいつの友達か?」

 

「えっ?ああ」

 

「こいつは頭がイカれているから気をつけろ、あまり関わらない方がいいぞ」

 

そう言って彼らは行ってしまいました。

 

恐らくデイブの家で出会ったのが彼らだったら、僕のことは助けてくれなかっただろう。

出会えたのがブロウディで良かったと思えた瞬間でした。

※ちなみにブロウディはさっき買った携帯をすでになくしていました。

 

 

 

その後、僕はバスキングを続け、貯まったコインを両替のため銀行へ持っていきました。

「786$」

渡されたレシートにはそう書いてありました。

体の力が一気に抜けました。

 

city councilまで楽器と機材を取りにいき

 

「今晩またやるなよ」

 

「二度とやるか」

 

そう言って、city councilを後にしました。

 

ブロウディに報告すると、自分のことのように喜んでくれました。

 

そして僕がサーファーズパラダイスを出る日、ブロウディに

「あまり酒を飲みすぎるなよ!」

と言うと

good luck!! テクノディジュリドゥman!」

と言って送り出してくれました。

 

 

あれから15年以上経ちましたが、あのイカれた天使くんは元気だろうか?

 

そんな事を思う今日この頃でした。

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーストラリアで出会ったイカれた天使 その2

前回の続きです。

もしよかったら、前回のブログも読んでいただけたら嬉しいです。

 

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楽器と機材を没収され、1週間以内にaus700ドルを払わなくてはいけなくなった僕は、とにかく仕事を探さなくてはいけなくなりました。

オーストラリアに来てバスキングしかしてこなかったので、何をしていいか分からなかったのですが、とにかく日本食レストランへ手当たり次第突撃してみることにしました。

 

しかし結果は惨敗。

何軒か日本食レストランへ突撃し、事情も話したのですが、あまりに急な話なのでどこも雇ってはくれませんでした。

旅をしていたので、見た目も相当汚かったです・・・。

 

 

そこで途方にくれていると、携帯が鳴りました。

電話の相手は、サーファーズパラダイスに住む日本人の友達からでした。

そして彼に事情を話すと、

 

「なんか友達に聞いたんだけど、オージーのゲイのおじさんがいて、その人、金がなくなって行くあてがなくなった人の面倒を見てるらしいよ」

 

「ま、マジか、なんかちょっと危なそうな匂いがするけど、大丈夫かな・・・」

 

「大丈夫、大丈夫、いい人だってよ、ちなみに細くて若い日本人が好きらしいよ」

 

僕は条件を見事にクリアしていた。

不安を抱えつつ、僕はそのおじさんを紹介してもらうことになりました。

 

 

彼の家は高層マンションの9階にあった。

そこに向かうエレベーターの中では、心臓がぶっ壊れそうなくらい緊張していました。

 

部屋の中へ入ると、だだっ広いリビングに三人掛けのソファーが置いてあり、真ん中に髪の毛がカールした、クルクルヘアーの上半身裸のおじさんが座っていた。

その両脇には、恋人?と思われる若い男の人が2人座っていました。

部屋の隅に目をやると、小さい子供を抱き抱えた中国人らしき女性がうずくまっていて、リビングの床には、数人の多国籍の若者が雑魚寝していました。

 

「な、なんだ、ここは」

 

異様な光景に言葉を失っていると、友達が僕を紹介してくれました。

おじさんの名前はデイブといい、見たところ4、50歳くらいに見えます。

僕が拙い英語で必死に事情を話すと、デイブも両脇の男の子達も真剣な眼差しで話を聞いてくれました。

 

そういう事情なんですが、何日かここに泊めてもらえないですか?」

 

「それは大変だったね、ただ悪いんだけど今ここは人がいっぱいでね、1日だったらそこの床で寝ていっていいよ」

 

そういってもらい、その日はデイブの家に泊まることになりました。

色々な事が起こり、疲れていたせいですぐに眠りについてしまいました。

 

 

しばらく寝ていると、玄関から騒がしい声が聞こえてきて、数人の高校生くらいの男女が入ってきました。

見たところすごく酔っており、いかにも不良少年という感じの出で立ちでした。

「うるさいな」と思いながら寝たふりをしていると、その中の一人の少年が僕に向かって

 

「あっ!テクノディジュリドゥだ!」

と言ってきました。

テクノディジュリドゥとは、僕がいつもバスキングする時にテクノミュージックに合わせてディジュリドゥを演奏していたため、たまに町の人からそう呼ばれていました。

 

そして不良少年達に叩き起こされ、しょうがなく事情を説明しました。

すると僕に最初に話しかけてきた男の子が、

 

「なんだ!それなら僕の家に泊まりなよ!一人で暮らしてるからいつまででも泊まっていいよ!」

 

そういってくれたのは、ブロウディという少年でした。

彼は高校生くらいの年ですが高校には行っておらず、街のバーで働いているらしい。

親とはもう長い事会っていないとか。

正直言うと、この子達に見ぐるみを剥がされる不安もありましたが、他に行く当てもなく、この先どうしたらよいのか分からなかったので、彼の世話になる事に決めました。

そして彼と電話番号を交換し、その日は眠りにつきました。

 

つづく

 

 

 

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